最近読んだ本⑦

小さき者たちの

著者 松村 圭一郎

この本は、能勢のEMMA COFFEE(エマ・コーヒー)さんで購入。コーヒーもサンドイッチもとっても美味しかったです。

小さき者たちの生活は、この世界がどういう姿をしているのか、それを映し出す鏡である。

文化人類学者である著者が、生まれ育った熊本の人々の歴史を掘り下げて小さき者たちの暮らしをたどる、そこから世界を考える本である。

まずは水俣。私は同じ熊本であり、海を隔てた港町で育ちました。にもかかわらず、まさしく「対岸の火事」としての認識しかありませんでした。

これは、私が子供だったからかもしれません。いや、いくつかの本を読み解いてみれば、海をはさんで水俣病の発症があった地域では、「風評被害」で魚が売れなくなることを恐れ、患者の存在を認めないばかりか隠し続ける。これを村ぐるみでやっていたのです。

なかなか表沙汰にされないまま、私は、水俣の人々のことを自分のこととして認識できなかったのだと思います。

次に天草、私の両親は天草出身です。隠れキリシタンの末裔などと気取っておりましたが、本書では、島原の乱後、激減した人口を補うため、各地の天領や九州諸藩に強制移民が割り当てられたこと。さらには天領となった天草は流罪地と指定され、流人たちが江戸から送り込まれたとあります。

この結果50年あまりで人口が10倍以上に膨れ上がったのだそうです。その後も人口増加は続きます。仕事もなく生活に困った島民は、口べらしのために身売りを余儀なくされていくのです。

「からゆきさん」については昔読んだ記憶があります。異国の地での耐え難い日々。そんな中で日本人としての誇りを忘れない彼女たちの声が聞こえてきます。

なにか歴史にもまれながら、変遷していく天草があります。そこにはどんな苦境のなかでも陽気にたくましく生きた小さき者たちがいました。