雑記⑯
ちょっと思い出してみると③
とんでもない先生だったのですが、先生が抱える問題の一つはここにあります。いきなりクラスの頂点に立ち子供たちを支配できるのです。勘違いもしますし、間違ったことも押し通すことができます。
新卒でいきなり教壇に立つのではなく、2,3年は、研修や補助教員として経験を積んだうえで担任を持つのが良いのだと思います。ただ、現場にはそんな余裕はないのが実情です。
誰に教わるでもなく、いきなり教壇に立った私は、悪戦苦闘しました。
元気な男の子が多く、授業中にもかかわらず喧嘩を始めるのです。注意するだけでは、収まりません。そこで、喧嘩を始めた二人を教室の前に呼び、黒板の横で気のすむまで続けさせました。
初めはむきになってつかみあう二人ですが、みんなの目が気になるのか、だんだんアホらしくなってくるのか、最後は笑っておしまいになります。ほっておくのが一番なのだと分かりました。
ある日、2か月前に転校してきた女の子に隣のクラスの子から「決闘状」が届きました。見せてくれた手紙には、「今日の昼休みに体育館の裏に来い!」と書いてありました。
これは面白いことになったと隣のクラスの先生に子細を伝えたうえで、観戦に行くことにしました。
体育館裏につくと、こちらを向いて、手紙の主らしい女の子とその取り巻きが3人、こちらは、転校生の子と我がクラスの精鋭が2人向かいあっていました。
ゴングが鳴ると、一対一のつかみ合いが始まりました。押したり引いたり、掴んで振り回そうとしたりしますが、そう簡単に決着はつきません。結局は痛み分けで終わりました。
本人たちの顔をみると、どちらも悔しがるどころか、晴れ晴れとしていました。小学二年生の戦いは、まるで決闘ごっこそのものでした。
何か近頃は、細かいことを気にしすぎるように思います。トラブルを避けたいのは分かります。しかし、その芽を早くから摘みすぎるように思うのです。
喧嘩はほめられたものではありませんが、その痛みを知り、加減を知ることは、決して無駄なことではないと思っています。