楕円球の思い出!⑤

速水君!いずこへ!?

我がチームの三分の一は未経験者でした。それでもサッカー部とかアメフト部とか球技経験者が多かったです。

そんなチームに新人が入ってきました。その名も速水君!大阪北部にある公立高校の出身で、高校時代は陸上部だったそうです。足が速い速水君!当然、戦力として期待されました。

速水君のデビュー戦は大阪城グラウンドでした。今では想像できませんが、当時は、石垣に沿って何面もグラウンドが続いていたのです。休日ともなれば、子供からおじさんまで試合をしていました。時には、企業の運動会などが行われていて、とても賑やかだったのです。

試合が始まり、10分ほど経過したころ、その時はやってきました。マイボールのスクラム、私は前列ですからスクラムが解けて顔を上げるとボールはバックスに回って遠くを移動していました。

センターから右ウィングの速水君にボールが渡りました。ボールを受け取った速水君は、すぐにトップスピードで一直線に走り始めます。前傾姿勢ではなくちょっと上体を反らし気味で走る速水君!速いぞ速水君!

追いかける敵との距離は縮まらず、あっという間にゴールラインに達しました!やったね速水君!初トライだね!今日は祝杯だぁ~!!

っっと思った時、異変に気が付きました。速水君は速度を緩めることなく走り続けているのです!ボールを置くんだ速水君!初トライなんだよ速水君!

こんな私の思いは彼に届くはずもなく、デッドボールラインを超え隣のグランドへ走り抜けて行ったのでした!!!

彼の弁護をさせてください。石ころだらけのグラウンドは荒れており、白線は見えにくい状態だったのです。どこにラインがあるのかが分からなかったのです。隣接するグラウンドのポールが目に入ったのでしょう。きっと速すぎたんだよ速水君!

信じられないと思いますが、本当にあったお話です。

そんな速水君は今どうしているのでしょうか?今どこを走り抜けているのでしょうか!?